フィットネスコラム

フィットネスの知っ得情報

彦井浩孝

オレゴン州立大学健康人間科学研究科博士課程修了(Ph.D.)、NPO法人チャレンジ・アスリート・ファンデーション理事長、横浜市病院協会看護専門学校講師、Telacoya旅する小学校講師、トライアスロン歴34年。 子どもから大人まで、チャレンジスポーツを通じて、健康的な地域社会の発展に貢献していくことを目的に活動。地元神奈川県葉山町では「HAYAMANトライアスロン」などのチャレンジスポーツイベントを主催し、「葉山海洋スポーツ塾」「葉山ニッパーズ」では地域の子どもたちに運動スポーツ指導を行っている。また、がん啓発やがんサバイバーらのサポートを通じて、がん撲滅のための活動にも力を入れている。トライアスロン歴28年。アイアンマントライアスロン40回完走。2015年アイアンマントライアスロン世界選手権出場予定。

季節の変わり目とエクササイズ

更新日:2015年 03月 23日
by フィットネスの知っ得情報

春分が過ぎ、日に日に春らしくなってきましたが、暖かいと思えばまた寒くなったりと、季節の変わり目では天候が不安定になりがちです。風邪を引いたり、体調を崩したりしやすいため、体調管理には注意が必要です。しかし、日常から運動習慣を続けていれば、健康維持はできるのです。

中程度の強度の有酸素運動を習慣的に行うことは、風邪の予防に有効であると考えられています(1)。これまでの研究によると、週5回の有酸素運動(中強度・45分間)を1年間続けた女性では、週1回のストレッチング(45分間)だけ行ったグループと比較して、風邪のリスクが顕著に低くなったことが示されています(2)。8週間の運動習慣でも、風邪などの原因になる気道の感染を予防する効果があったと報告されています(3)。また、約1万4,000人(50-69歳男性)を対象に、平均6年間にわたる風邪の発症と運動習慣の関連性について調べた研究(4)によれば、週に1~2回、ジョギングや水泳などの運動を習慣的に行っている人では、運動を行っていない人と比較して14%風邪を引くリスクが低いことがわかりました。

風邪の予防に栄養面から効果的とされている栄養素としては、抗酸化作用をもつビタミンCが一般的ですが、これまでに報告された多くの研究論文を総括して検討した結果、ビタミンCの習慣的摂取には風邪の予防効果が特に見られませんでした(5)。ただし、風邪を早く改善させたり、症状を緩和させたりする上では、習慣的な摂取が役に立ちそうです。また、激しい運動を行う人では、さらにビタミンCの有効性が高まるようです。

このように、習慣的な運動やビタミンCのような栄養素の摂取には、風邪を防いだり症状を和らげたりするなどの効果が認められています。しかしながら、これらの効果については学術的根拠がまだまだ不足しており、また、必ずしも研究結果が一貫していないのも事実です。とはいえ、経験的に習慣的な運動を行って栄養面にも気を配ることで、年間を通じてたいした風邪を引くこともなく、毎日を元気に過ごせていることには納得がいきます。日々運動を行い健康的に生活を送っているみなさまにとっても、共感できることではないでしょうか。

 

さて、これまでお送りしてきた本コラム「フィットネスの知っ得情報」ですが、今回で最終回になります。フィットネスに関わる話題を、意外(!?)な視点から最新のエビデンスを交えてお伝えしてきました。運動不足が大きな社会問題となっている昨今、このような情報がもっと幅広く発信されれば運動の有効性がもっと認知され、問題も解消されていくのではないかと願いつつ、読者のみなさまにその役割をお繋ぎできることを期待して締めくくりたいと思います。これまでお読みいただきありがとうございました!

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習慣的な運動を行って栄養面にも気を配ることで、毎日を元気に過ごしましょう。

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<参考文献>

1.Leeら、2014年
2.Chubakら、2006年
3.Barrettら、2012年
4.Hemilaら、2003年
5.HemilaとChalker、2013年

運動を行ってぐっすり春眠

更新日:2015年 03月 09日
by フィットネスの知っ得情報

春がぐっと近づいてきました! 「春眠暁を覚えず」。寒さも少しずつやわらぎ、夜もぐっすり眠ることができるようになりました。朝の目覚めも快適!

睡眠は、私たちの健康を守る上でとても重要です。しかしながら、寝つきが悪い、睡眠時間の不足、眠りが浅い、睡眠中に何度も目が覚めるなど、睡眠の質の低下を訴える人も少なくありません。

これまでの研究では、睡眠不足の人ほど体重増加が顕著で(1)、肥満や2型糖尿病の傾向が高いことが知られています(2)。最近の研究では、習慣的な睡眠が長い人では体格指数(BMI)が低く、糖質や脂質の摂取量も比較的低いことが示されています(3)

また、睡眠不足の人ほど運動量が低くなる傾向にあり(4)、これも体重増加や肥満の原因になっていると考えられます。「寝る子は育つ」とは昔から言われることですが、これが歪曲して「寝過ぎは太る」と誤解して認識されている場合も少なくありません。睡眠中はエネルギー代謝も抑えられカロリー消費量が少なくなり、起きている時間が長いほどダイエットに有効と考える向きもありますが、実際には睡眠時間が少ないほど食欲を過剰に高めて食事量が多くなり、カロリー摂取量が増えることによって結果的にエネルギーバランスがプラスとなって体重増加や肥満を引き起こしてしまいます(2)。しかも、睡眠不足によって脳の働きがより高カロリーの食品を欲するように、食行動そのものにも変化をもたらすことも示されています。

一方で、中強度(最大酸素摂取量の60%)の運動は、睡眠の質を高めることが示されています(5)。つまり、体重を維持して健康を守る上で重要となる睡眠は、運動によってその質が高まるのです。有酸素能力の高い人では、寝つきがよく、睡眠中の覚醒時間が短いことが示されています(6)

このように、運動と睡眠、それぞれを見ても健康維持には欠かせませんが、両者には有効な相互関係があるのです。運動をしっかり行ってぐっすり眠る。新年度に向けての健康・体力づくりのため、心地よいこの春こそ運動を行ってぐっすり眠りを確保するようにしましょう。

誰ですか、朝になったことにも気づかずにすっかり眠り込んでしまっている方は?

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運動と睡眠それぞれに、友好な相互関係があります。

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<参考文献>

1.St-OngeとShechter、2014年
2.Copinschiら、2014年
3.Dashtiら、2015年
4.ShechterとSt-Onge、2014年
5.WangとYoungstedt、2014年
6.Edingerら、1993年

花粉の季節の運動習慣

更新日:2015年 02月 23日
by フィットネスの知っ得情報

暖かい春はもうすぐ! とはいえ、鼻がむずむず、目がしょぼしょぼ…、花粉症の方には辛い季節の始まりでもあるようです

花粉症の人にとってこの季節の運動は、やはり好ましくない活動となる可能性が大きいようです。運動を行うと換気量が高まり、より多くの大気中の花粉を吸い込んでしまうからです。花粉症では、抗原である花粉と抗体である免疫グロブリン(IgE)が結合してアレルギー反応を引き起こします。これまでの研究報告(1)によると、花粉症をもつ人では運動(最大負荷の60%強度で40分間)によって血中のIgEが31%高まったことが示されています。花粉症でない人では運動を行っても変化はなく、食物アレルギーのある人では逆に低下したようですので、運動中のIgEの増加は、花粉症特有の現象といえそうです。

とはいえ、習慣となっている運動を中断するわけにもいきません。できるだけ花粉症への影響を抑えながら運動を継続するためには、普段からマスクなどを装着して症状を抑えておくことはもとより、花粉の多い屋外ではなくできるだけ屋内の運動を選ぶようにします。しかし、フィットネスクラブ等の施設への出入りによって、屋外から衣類や髪に付着した花粉が運び込まれる可能性もありますので、屋内へ入る際には花粉を払うなどの注意も必要です。

水泳やアクアエクササイズなどは花粉を吸い込む可能性が低く、花粉症の人にとっては“救い”の運動環境となりそうですが、実際にはプールの水に含まれる塩素などが目鼻の粘膜を刺激してしまうため、かえって症状を悪化させてしまう場合もあるようですので、これも注意を要します。スイム後の洗眼とうがいは十分に行っておきたいものです。

人間の体には、体内に侵入した外敵と闘おうとする働き(免疫機能)がありますが、本来ならば無害な花粉にまで過敏に反応して免疫機能が働いてしまうとアレルギー反応が起こります。これによりヒスタミンなどの物質が放出されると神経や血管が刺激され、くしゃみ、鼻みずや目のかゆみなどのアレルギー症状が起こります。ハードな運動は血中のヒスタミン濃度を高めてしまいます(2)。したがって、花粉症の症状を悪化させることになりかねません。また、長時間の激しいトレーニングは免疫機能を低下させて(3)、花粉やウイルスへの抵抗力を弱めてしまいますので、積極的な疲労回復を図るなどの工夫も講じておきたいものです。

このように、花粉症の方にとって運動にはデメリットがありそうですが、その一方で、習慣的な運動は免疫力を高めてくれるため (3)、長い目で見れば、花粉やウイルスへの抵抗力を高め、花粉症にかかりにくくなったり、かかっても症状が軽くなったりすることが期待できます。ゆっくりめの運動が鼻炎の症状を緩和してくれることも示されています(4)。また、自律神経の調整力も高め、過剰なアレルギー反応を抑制してくれる働きも期待できそうです。やはり、継続的な運動習慣を心がけることが第一なようですね。

 

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花粉症の方にとって運動にはデメリットがある一方、習慣的な運動は免疫力を高めてくれるというメリットもあります。

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<参考文献>

1.Aldredら、2008年
2.Wetterら、2001年
3.Nieman、2000年
4.Tongtakoら、2012年

バレンタインデーに"健康"の贈り物を

更新日:2015年 02月 06日
by フィットネスの知っ得情報

立春を過ぎ、春の気配を見つけることが嬉しい季節になってきました。さらに、世の男女にとっても色めく季節と言えるかもしれません。そう、バレンタインデーが近づいてきました!

バレンタインデーの贈り物というと、日本ではチョコレートが定番。そのチョコレートの原料であるカカオに含まれるポリフェノールには、多くの健康上のメリットのあることが知られています。特にダークチョコレートにはポリフェノールが豊富に含まれ、心臓血管系疾患の予防、メタボリック症候群や脂質代謝の改善、肥満予防の効果の高いことが示されています(1、2、3)

これまでの研究では、2週間にわたるダークチョコレートとホワイトチョコレートの摂取による心臓循環への影響が比較されています(4)。この研究によると、カカオ(ポリフェノール)の多いダークチョコレートを摂取したグループでは、カカオの含まれないホワイトチョコレートを摂取したグループと比較して、心臓の冠状循環が改善されることがわかりました。また、ダークチョコレートの血圧への影響を調べた研究(5)では、18週間のダークチョコレートの摂取は、ホワイトチョコレートを摂取した場合と比較して、収縮期(最高)と拡張期(最低)血圧ともに顕著に低下させることがわかりました。

また、激しい運動は、体内で大きな酸化ストレスを発生させますが、2週間にわたって1日2回ダークチョコレートを摂取することによって、激しい運動による酸化ストレスを軽減させ、運動中の脂質の代謝を促進することが報告されています(6)。最近では、気分(7)や認知能力(8)を改善する可能性も指摘され、アンチエイジング効果も注目されているようです。

このように、カロリーから見るとネガティブな印象を受けかねないチョコレートですが、カカオが豊富のダークチョコレートに関しては、その適度な摂取が健康上のメリットをもたらす可能性があると言えそうです。バレンタインデーには、ぜひ大切な人の健康を願ってチョコレートをプレゼントしましょう!

ただし、カカオリッチなチョコレートにこそ有効性があることと、やはり何でもそうですが食べすぎには要注意。実は私も大のチョコレート好き。食べすぎには気をつけたいものです。

ハッピーバレンタインデー!

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バレンタインデーには、大切な人の健康を願ってチョコレートをプレゼントしましょう!

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<参考文献>

1.Berends、2015年
2.Farhatら、2014年
3.Osakabe、2013年
4.Shiinaら、2007年
5.Taubertら、2007年
6.Allgroveら、2011年
7.Paseら、2013年
8.ScholeyとOwen、2013年

準備運動にストレッチングは必要!?

更新日:2015年 01月 22日
by フィットネスの知っ得情報

皆さんは運動の前にストレッチングを行っていますか? ストレッチングは、ウォームアップやクールダウンの定番です。また、ケガのリスクを減らし、その予防にも有効とされています。

しかし、最近ではこのストレッチングの効果に異論を唱える話題が相次いでいます(1)。特に「スタティック・ストレッチング(静的ストレッチング)」といわれる、関節を伸ばしたまま、あるいは曲げた状態で静止するストレッチングの効果に対しての異論が多くあります。

例えば、これまでの研究では、ふくらはぎとお尻の筋肉のストレッチングによってスプリントとジャンプのパフォーマンスが低下した(1)とするものや、1分間のふくらはぎのストレッチングを5回繰り返すことにより最大筋力が低下した(2)などとするものが報告されています。加えて、40秒間の脚のストレッチングは、関節の伸展性を高めはしたものの、やはりスプリントとジャンプの妨げになった(3)ことなどが示されています。

また、運動の前に30秒間のストレッチングを4回繰り返して行うと、運動時の酸素消費量が増加することを示す研究も報告されています(4)。これは、ストレッチングを行わなかった場合と比較して、同じ負荷でもより多くの酸素を必要とする、つまり運動時のエネルギー効率が悪くなったことを意味しています

もっとも、これらのストレッチングの効果に関する研究では、方法論の問題も指摘されていることから、必ずしもただちにストレッチングが無効、あるいは悪影響をもたらすとは言い切れないところがあります(1)。実際、パフォーマンスへの影響は、ストレッチング実施時間が60秒以上となる場合において起こることが多く、30秒間程度ではほとんど悪影響をもたらすことはないと言えそうです。特にスポーツの場面では、比較的長い時間のストレッチング直後は筋肉の張力が減少し、力の伝達率が低下する可能性があることから、実施時間を30秒以下に抑えることが大切でしょう。

一方で、運動を行ううえで必要な関節の可動域を、ストレッチングによって確保しておくことは、結果的に運動パフォーマンスを高めることにもつながります。また、正常な関節可動域の維持や改善は、日常生活や日ごろのレクリエーション活動を安全に行ううえでも重要です。ただし、傷害の予防に関しては、ストレッチングが腱炎などの傷害の発生リスクを軽減する可能性は低いようです。

このように、ウォームアップやクールダウンの定番であるストレッチングですが、なんとなく行うのではなく、実施時間にも配慮し、続けて行う運動に必要な関節の可動域を確保することなど、目的をもって取り組むことが大切です。

寒い冬の季節などでは特に、いきなりストレッチングを行うことは冷えて固くなったゴムをむりやり伸ばすようなものですので、実施の際には軽いウォーキングや体操などで筋肉を温めてから行うなどの注意が必要です。運動前には準備運動を忘れずに!

 

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ストレッチングはなんとなく行うのではなく、実施時間にも配慮し、続けて行う運動に必要な関節の可動域を確保することなど目的をもって取り組むことが大切です。

 

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<参考文献>

1. MagalとThomas、2013年
2. Haddadら、2013年
3. Mizunoら、2013年
4. Paradisisら、2013年
5. Wolfeら、2011年

気温・体温と運動の関係

更新日:2015年 01月 06日
by フィットネスの知っ得情報

新年おめでとうございます。今年も充実したフィットネスライフを楽しみましょう! どうぞよろしくお願いいたします。

さて、お正月にテレビで箱根駅伝を観戦していました。今年も素晴らしいドラマがあったと思います。箱根の山を上って下る往路5区では、コースの過酷さもさることながら、極寒の環境による影響も大きく、最後まで走りきったものの、低体温症で救護された選手もいたようです。

寒い日のマラソンでは、完走率が低下することが知られています(1)。寒さは体から熱を奪い、体温を低下させてしまいます。通常、寒さの中でも運動によってエネルギー代謝が高まり、同時に熱も産生されるため体温は維持されますが、寒さの影響が深刻だと、さらに熱産生が必要となります。したがって、同じ運動でも気温の低い時のほうがエネルギー代謝は高く、酸素消費量も増えます。この酸素消費量の増加分は、熱の損失によって生じる体温の低下を防ぐため、寒さに対して反射的にからだを震わせるためのエネルギー産生に利用されます。

寒さは、関節の動きを硬くして運動効率を低下させ、さらにエネルギー消費を高めます。つまり、寒さの中の運動では、生理的負担がさらに高まることになるのです。また、運動により疲労すると、末梢の血管を収縮させて熱のロスを防ぐ機能が損なわれるため、熱損失が大きいことも知られています(2)。血糖やグリコーゲンなどの糖質の不足も、エネルギー代謝の維持に影響します(3)。したがって、万が一、疲労やエネルギー切れが起こり、これらの生理的な働きを維持することができなくなると、熱の産生が損失に追いつかなくなり、寒さに体温をどんどん奪われてしまうことになります。ひどい場合には低体温症にも陥ってしまうでしょう。

一方、寒さによる影響には個人差があり、フィットネスレベルや体脂肪量にも依存しています。たとえば、皮下脂肪量の多い人ではそれ自体が熱の損失を防ぐ役割を持つため、同じ運動でも生理的負担が比較的少なくなります。フィットネスレベルの高い人では、寒さの中でも早めにからだを震わせることによって熱生産を行うことができるため、寒さにも強いようです。

体温を維持するためには、衣類などでからだを温める工夫も必要です。加えて、寒い日に運動を行う際には、十分なウォームアップも欠かせません。筋肉が冷えると、柔軟性の低下を引き起こし障害が発生しやすくなります。この場合、静的なストレッチングのよりも、ウォーキングや動的なストレッチングを行うほうが有効です。

寒さに負けず、充実したフィットネスライフを送りましょう。

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寒い日の運動では、服装やウォームアップで体温を維持する工夫をして、筋肉を冷やさないようにしましょう。

 

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<参考文献>

1.Roberts、2007年
2.Castellaniら、2001年
3.YoungとCastellani、2007年

 

お酒&エクササイズの組み合わせは計画的に

更新日:2014年 12月 22日
by フィットネスの知っ得情報

忘年会、クリスマス、新年会…、にぎやかで楽しい季節になりましたね。食べたり飲んだりする機会が多くなる一方で、エクササイズする機会は減って、体重はだんだん右肩上りに…。また、食べすぎ飲みすぎを覚悟して、事前にエクササイズを行っておけば“免罪符”になると考え、宴会の前に大急ぎでエクササイズしてから会場へ飛び込み、駆けつけ一杯などとやっている方もいらっしゃるのではないでしょうか!?

これまでの研究(1)では、健康な人(30-39歳)に30分間のエクササイズ(最大酸素摂取量の70%)を行ってもらい、同時に体重1kg当たり10mlのビールを飲んでもらった後での血中の尿酸値を測定したところ、血中の尿酸値は安静時と比べて29%も増加したことがわかりました。エクササイズかビール摂取のどちらかのみを行ってもらった場合の尿酸値が、安静時と比べてエクササイズ後で12%増加、ビール摂取後で8%増加だったようですから、エクササイズとビール単独では比較的尿酸値の増加は大きくないのですが、組み合わせると一気に増加率が大きくなるようです。

これは、エクササイズによる乳酸の生成が、尿酸の尿への排泄を妨げることが可能性として考えられています。ビールを飲んでお手洗いへ行っても、エクササイズ後では尿酸の排泄が妨げられるため、血中の尿酸値が高いままになってしまいます。宴会などの前のエクササイズは軽くすませるなど、注意が必要かもしれません。特に、尿酸値の気になる40歳以上の方は気をつけたいところです。

また、エクササイズ後の飲酒は胃の粘膜を荒らし、肝臓ではアルコールの処理に忙しく乳酸の除去が損なわれてしまいます。これは、栄養補給の遅れや血糖値の低下、また疲労蓄積の原因にもなりますのでやはり要注意です(2)

一方、習慣的なアルコール摂取は酸化ストレスを高め、糖質や脂質の代謝を低下させ低血糖を引き起こしやすくしますが、習慣的なエクササイズにはこれらの悪影響を軽減する効果があるようです(3)。また、エクササイズには、脂肪消費を促進し、食後の血中の中性脂肪値の増加を抑える効果もありますので、お酒を飲む人はやはりエクササイズ習慣を維持することが大切です。

 

つきあいの多くなるこの季節、エクササイズとお酒を飲む機会ともうまくつきあって、計画的に健康的に過ごすことが一番ですね。

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宴会などの前のエクササイズは軽くすませましょう。特に、尿酸値の気になる40歳以上の方は要注意です。

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<参考文献>

1.Kaら、2003年
2.Haugvadら、2014年
3.Pestaら、2013年

「忙しい...」は言い訳にできない!? 4分で効果が出るエクササイズ」

更新日:2014年 12月 05日
by フィットネスの知っ得情報

エクササイズしなければと思いつつ、それをなかなか実行に移せない人の言い訳ランキング(!?)の、堂々1位に挙げられるものは、やはり「忙しいから…」ではないでしょうか。時間のないことを理由に、なかなか実行に踏み切れない人の多いのが現状です。時間のやりくりや節約によって、何とかエクササイズ時間を捻出しようとしてきた人も多いでしょうが、無理して時間を作ろうとしてもやはり長続きしません

「エクササイズ」というと、ある程度まとまった時間が必要と考えてはいませんか? 実は、効果を求めるのに、必ずしも長い時間をかける必要はないのです。

そこで…、4分だけ下さい!

実は4分だけあれば、エクササイズの効果の出ることがわかっています。どんなに忙しい人でも、4分ぐらいは何とかなりますよね。

高強度インターバルトレーニング(high-intensity interval training: HITまたはHIIT)と呼ばれるトレーニング方法は、長く続ける有酸素運動と比べて運動時間は少なくなりますが、高強度の負荷で行うことにより、その効果は同等かそれ以上であることがわかっています。

これまでの研究(1)では、被験者に最大有酸素能力(最大酸素摂取量)の170%の強度の自転車運動を20秒間行い、10秒間の休息を挟んで8セット繰り返すこと(4分間)を週に5回、6週間実施させました。その結果、最大酸素摂取量が増大し、これは最大有酸素能力の70%の自転車運動を60分間行ったもの(同じく週5回、6週間)よりも効果が高くなりました。運動時間はわずか4分間ですが、強度が高ければ効果は非常に高いことが示されたのです。

その他HITの効果には、抗酸化能力の向上、脂質代謝の改善、体脂肪率の減少、除脂肪体重の増加、血糖値やコレステロール値の改善などが最近の研究で報告されています(2、3、4、5、6)

このように、エクササイズの習慣化に「時間不足」や「忙しさ」が障壁となる場合が多いことを考えると、時間の節約になるHITの「時間対効果」は絶大です。また、自重を使ったエクササイズ(もも上げ、「バーピー(※)」、ランジ、スクワットなど)で組み立てればバラエティに富み、レベルに合わせた負荷設定もできるため、工夫次第で安全で楽しいHITプログラムができあがります。ぜひお試しください!

 

※バーピー:ジャンプと腕立て伏せを組み合わせた簡単なエクササイズで、繰り返し行うことで脂肪燃焼効果が高まる

 

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「HIT」の例(もも上げ)

 

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<参考文献>

1. Tabataら、1996年
2. GibalaとJones、2013年
3. Slothら、2013年
4. BuchheitとLaursen、2013年
5. Astorinoら、2011年
6. Gillenら、2013年

寒い朝の最強コンビ!?

更新日:2014年 11月 21日
by フィットネスの知っ得情報

寒い季節になると、外でエクササイズすることがついおっくうになりがちです。しかし、寒い季節だからこそ張り切ってエクササイズを行えば、とてもよいことがあるのをご存知ですか?

気温の低い環境では、寒さによる体温の低下を防ぐため、反射的にからだを震わせて筋肉で熱を作り出します。この時のエネルギー源に脂肪が多く利用されます。特に気温の低い中でのエクササイズでは、気温が比較的高い中での同じエクササイズと比べると、総エネルギー消費量は変わらないものの、脂肪消費の比率がより多くなります(1。しかも、その傾向は、運動強度の低いウォーキングより強度の高いランニングで顕著です。

最大有酸素能力の50%強度のウォーキング(60分間)と、70%強度のランニング(同)を比較した場合(室温22度)、総エネルギー消費量はランニングのほうが多くなりますが、その差は脂肪からのものではなく、むしろ糖質消費の差になります。ところが、室温0度の寒い環境では、依然ランニングのほうがウォーキングより糖質の消費が大きいものの、その差は小さくなる傾向にあり、逆に脂肪消費の差が大きくなるようです(2。つまり、寒い季節のエクササイズは、運動強度を少し高めで行ったほうが、脂肪消費により有利と考えられます。

 

ところで、コーヒーなどに含まれるカフェインに、エクササイズ中の脂肪消費を高める効果のあることが古くから知られていますが、その効果はやはり寒い環境において高まる傾向にあります(3。したがって、寒い朝のモーニングコーヒーとエクササイズ、できれば少しペースをアップしたジョギングやランニングなどの組み合わせが脂肪燃焼にいっそう効果が高いと言えるかもしれません。

また、体脂肪の多い人のほうが、少ない人に比べて、体温の低下を防ぐためにより多くの脂肪を利用することができます(4。体脂肪の気になる人は、寒い季節こそエクササイズに励みたいところですね。

 

これからの寒い季節も、充実したフィットネスライフをお過ごしください。ただし、エクササイズの前の十分なウォームアップをお忘れなく!

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<参考文献>
1.Gagnonら、2013年
2. Gagnonら、2013年
3.AndersonとHickey、1994年
4.TonerとMcArdle、1988

 

朝ごはんを食べて行ってらっしゃい!

更新日:2014年 11月 05日
by フィットネスの知っ得情報

立冬を目前に、すでに朝晩の寒さを感じる季節となりました。「寒いから…」と、朝起きるのがルーズになってきてはいませんか!? 少しでも寝坊してしまうと、ゆっくり朝ごはんを食べることもできませんよね。

ところで、皆さんは毎日朝ごはんを食べていますか。毎日ではないけれど、たまに抜いたりしていないでしょうか? あるいはダイエットのためと、意図的に食べていなかったりして…!?

平成24年国民健康・栄養調査(厚生労働省)によると、朝食の欠食率は、男性では20代で29%、30代で25%、40代で19%、女性では20代で22%、30代で14%、40歳代で12%となっています。若い年代ほど欠食率が高く、20~30代男性では3~4人に1人、20~30代女性では5~7人に1人は朝食を摂っていない傾向にあることがわかります。

朝食抜きはよくないのでしょうか? 20代日本人を調査した研究(1)では、大腿骨頭や腰椎の骨密度が朝食の摂取と有意に関係のあることを突き止めています。20代でも朝食を欠食する傾向が骨密度に影響を与えているとは驚きです。また、この欠食は毎日でなくても週3回以上で影響が出るようです(2)。ただし、朝食を摂取する習慣に加え運動習慣は骨密度を高める傾向にありますので、毎日しっかり朝ごはんを食べて、定期的に運動することが骨の健康維持には不可欠です。

また、20代から60代の男女に、意図的に朝食を6週間にわたり抜いた生活を送らせた研究(3)では、朝食の欠食が運動中の熱産生を低下させたと報告されています。つまり、朝食を食べて運動を行ったほうが減量にもより効果的である言えるかもしれません。朝食を毎日摂っている人では、そうでない人と比較して、体格指数(BMI)が低い傾向にあることはこれまでにも知られているところです(4

このように、朝食を摂るという生活習慣は栄養やエネルギー補給の目的だけでなく、健康管理や体重管理にとっても大切であることがわかります。朝からしっかり食べて、毎日を元気に過ごしましょう!

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<参考文献>
1.Ishimotoら、2013年、Nagataら、2014年
2.Kurodaら、2013年
3.Bettsら、2014年
4.Affenitoら、2005年、Songら、2005年、Bazzanoら、2005年

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