2016年 03月 01日
JAFA機関誌『ヘルスネットワーク』に連載中の「科学的事実に基づく介護予防のための運動」(筆者:西端泉)は、加速する超高齢社会において、介護を必要としないための運動方法を解説するコーナーです。
以下に、今月号(2016年3月号p14「第11回(最終回) 転倒・骨折を予防する運動」)の確認問題の、解答と解説を掲載します。
問題1
以下の転倒予防のための運動に関する記述の中から、正しいものを選べ。
正解はc
a:転倒率を比較すると、高強度トレーニングが0.73、低強度トレーニングが0.91ですから、高強度トレーニングの方が転倒率を減少させる効果は大きいことになります。
b:高強度トレーニングにウォーキングを追加すると、転倒率は0.96に高まるので、ウォーキングは転倒予防には役立たないことになります。
c:高強度トレーニングにバランストレーニングを追加すると、転倒率は0.58に低下するので、バランストレーニングは転倒予防に役立つことになります。
d:『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2011年版』の中では、強度は、表としても、文章としても示されていますが、量に関する情報は示されていません。ところが、『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2011年版』が根拠にした論文の中では、“>50 hours over the trial period(研究期間中のトレーニング時間は50時間以上)”の方が効果的であったと示されています。
問題2
以下の中で、骨量と最も関連性の強いものはどれか。
正解はa
a:宇宙にいると、地上(地球上)にいるときと比較して、20倍以上の速度で骨量が失われます。この原因は無重力です。体重とは、すなわち重力です。ですから、体重は重いほど、骨に加わる刺激は大きく、骨量は増加します。
b:カルシウムは、心筋や骨格筋が収縮する際に不可欠なミネラルです。つまり、単純に言うと、カルシウムが不足すると、心臓は止まります。このため、食事によるカルシウムの摂取量が不足すると、骨を溶かして、心筋や骨格筋に供給します。この結果、骨量は減少します。しかし、サプリメントなどによって、必要以上にカルシウムを摂取しても、吸収されず、また、吸収されたとしても、尿中に排泄されてしまうので、骨量は増加しません。
c:運動は、骨に加わる刺激を増加させるので、骨密度を増加させる可能性はあります。しかし、運動量(身体運動量)が多いということは、エネルギーの消費量が多いことを意味するので、体重は減少する可能性があります。もし体重が減少すると、重力刺激は減少するので、骨量は低下します。ですから、骨のことのみを考えるのであれば、身体活動量を増加させても、体重は減らないように、食事量も増加させる必要があります。
d:柔軟性と骨量はとの間に、関連性はありません。
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