2015年 11月 26日
JAFA機関誌『ヘルスネットワーク』に連載中の「科学的事実に基づく介護予防のための運動」(筆者:西端泉)は、加速する超高齢社会において、介護を必要としないための運動方法を解説するコーナーです。
以下に、今月号(2015年11月号p14「第9回 高齢による衰弱を予防する運動 その2:レジスタンストレーニング」)の確認問題の、解答と解説を掲載します。
問題1
アメリカスポーツ医学会(ACSM)のガイドラインが示している、一般成人を対象にしたレジスタンストレーニングの強度に関する記述として、正しいものはどれか。
正解はc
まず、各選択肢に使用されているRMという記号の意味が分からないと、この問題は解けません。RMとはRepetition Maximumの頭文字であり、「最大反復回数」の意味です。つまり、限界まで繰り返したときに反復することができる回数のことです。ただし、やみくもに限界に挑戦することには危険が伴うため、次の条件が満たせる範囲で、8回から12回しか繰り返すことができない負荷でトレーニングを行うようにします。なお、高齢者の場合で、特に最初の半年から2年ぐらいは10〜15RMで行います。
・ 原則として関節可動域全体を使って動作を繰り返す。ただし、障害が既にある場合、関節が反ってしまう可能性がある場合、フリーウエイトを使用するときに重力負荷が利用できなくなる場合などでは、可動域を制限することもあります。
・ コンセントリック(短縮性)とエクセントリック(伸長性)筋活動の両方を行う。特に、エクセントリックでは、意識してゆっくりとしたスピードで行わないと、十分な刺激が得られなかったり、反動を使ってしまったりして安全性に問題が生じることがあります。
・ 目的としている骨格筋に集中して負荷が加わるように、正しい姿勢を維持したままで行います。
・ 息こらえをしない。息こらえが始まったら、限界と考え、動作を終了する。
問題2
アメリカスポーツ医学会(ACSM)のガイドラインから判断して、高齢者が平日にレジスタンストレーニングを実施する場合、最も望ましい実施曜日はどれか。
正解はd
ACSMは、レジスタンストレーニングの実施頻度として、週に2〜3回と示しています。同日に、間に48時間以上の間隔が必要であることも示しています。有酸素性運動は、実施する人の健康状態、年齢、体力などに応じて、最大心拍数の64%〜96%、または心拍予備量の40%〜90%の間で行います。つまり、100%強度では行いません。これに対して、レジスタンストレーニングは、毎回、安全性を保てる範囲ではあるものの、限界まで動作を反復します。そうすると、強い筋疲労が残ります。この筋疲労から回復するのに、若い人では48時間ぐらいかかります。もし、この筋疲労から回復する前に次のトレーニングを行うと、筋疲労が蓄積していき、慢性疲労状態になって、逆に筋力は低下していくことになります。ですから、若い人であっても、同じ骨格筋を使用するレジスタンストレーニングは2日連続で行ってはいけないのです。逆に言えば、2日連続でトレーニングを行って、その2日目にも、1日目と同じ負荷で、同じセット数で、同じ回数動作を無理なく繰り返すことができるとしたら、そのトレーニングは強度・量が足りないことを意味します。
高齢になるほど、疲労からの回復に時間が長く必要になるため、高齢者の場合は、中2日は空ける必要があります。しかし、週に1回では十分な効果を得ることはできません。
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