2012年 12月 12日
「医療連携プロセス標準策定コンソーシアム説明会」に参加して
笹川さゆり(JAFA/ADI 理学療法士 栄養士 ホームヘルパー2級)
公益社団法人スポーツ健康産業団体連合会主催の「医療連携プロセス標準策定コンソーシアム説明会説明会」(12月6日開催)へ参加してまいりました。参加者の大半は民間フィットネスクラブや資格認定団体の代表などで、私のようなフリーのフィットネスインストラクターは少数であったようです。私は、JAFAのウェブサイトで参加者募集の記事を見つけ応募しました。
今回は、医療連携プロセス標準策定の目的、及び標準第一次案の説明を行った後に、参加者から質問や意見、要望を募り、主催者側が実現化に向けてさらなる検討をし、企画開発していくという目的で説明会が開催されました。
医療連携プロセス標準策定コンソーシアムとは、医療・介護等関連分野における規制改革・産業創出調査研究事業の一環で「一次予防から三次予防領域において、医療保険制度でカバーできていないポストリハビリサービスを、民間サービス(自費サービス)として実施するためのサービス提供プロセスの標準化に向けた企画開発を行い、本領域における医療生活サービスの新たなマーケット開発の基盤を整備すること」を目的にするとされています。第一次案では、具体的に医療機関からフィットネス事業者へどのように連携されるか医療連携プロセスの例をあげながら説明がなされました。以前、私が『ヘルスネットワーク』で連載した、保健・医療・福祉とフィットネスの連携に通じる内容であり、本企画が実現すれば、フィットネス人口3%停滞の改善、リハ難民の救済のためのポストリハビリのシステム構築につながると期待できます。
一方で、実現化には課題があり、参加者から質疑応答、要望、提案等の聴取がなされました。挙げられた課題には、財源の確保、リスク管理、ポストリハビリとしての対応が可能な人材育成および環境整備、またそれにかかる費用の助成の有無、ドクターとフィットネス分野の交流不足等がありました。
本企画の特徴は、予防サービスにおいてフィットネス業界の新たなマーケットを開拓していくというところです。今までのマーケットでは、一次予防である疾病予防、健康増進目的で運動意欲の高い方々を対象としてきました。新しいマーケットでは、二次予防と呼ばれる重症化の防止、疾病の早期発見と早期措置、適切な医療と合併症対策などの医療機関で運動の必要性を認められた方が速やかに運動を実施できるようにするための医療との連携によるサービス提供、さらに三次予防と呼ばれる疾病の再発防止や、リハ難民と呼ばれる医療保険においての日数制限によって打ち切られた方を対象とするポストリハビリテーションとしてのサービス提供を行うことで、推定5000万人が対象となるとされています。
2050年には、高齢者人口は30%を超すと想定されており、医療保険、介護保険、年金制度も、そのときに存続しているか疑問視されています。これらの現状を受けて、これからは予防医学の時代と言われ、現在も介護予防、メタボ予防、ロコモ予防等と一般的に使われています。しかし、予防効果の実証は、即時的な評価や客観的な評価は困難であり、数値化できない効果もあり、事業としての確立も困難なことも考えられます。また〝健康は失ってから、初めてその大切さを知る″と言われるように、普通の状態を維持すること、病気にならない状態を保つこと、今以上に悪くしないことが、簡単なようで実は難しいことを軽視しがちです。
また、新たなマーケットの対象者は、フィットネスクラブに通う方と比較して運動経験が乏しく、運動意欲も低く、自己管理能力も低下されていることが予想されます。そのような対象に果たして、自費によるフィットネスサービスがどこまで浸透するかは根本的な課題に挙げられます。
これらを考慮すると、フィットネス業界は、今までフィットネス業界内で通用してきた概念や思考をリセットして、新たなマーケットの対象者を理解し歩み寄りながら、その方々に合わせた対応をすることが必要となってきます。そして、医療機関と連携するためには、フィットネス業界は医療業界から信頼を得ることが必要となってくると考えます。そのためには、医療機関受診者に対応できるリスク管理、環境整備、医学的知識を持ち合わせ人材(指導者を含め)の充実が必須となることでしょう。
本プロジェクトを実現させるためには、フィットネス業界全体が一丸となって医療連携に向けてのアクションを起こしていく必要があります。これは、組織レベルでのアクションもありますが、1人1人の意識も必要になってくると考えます。
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